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Global Editors Network – Tokyo Editors Lab

https://www.globaleditorsnetwork.org/programmes/editors-lab/tokyo-editors-lab/

Editors Labは、メディアの世界的組織Global Editors Network(以下GEN)が主催の、報道機関のみが参加するメディアに特化したハッカソンプログラムです。2012年からはじまり、いままでに20か国以上で開催されています。各国で開催される予選大会を勝ち抜いたチームはGEN主宰の国際会議「GEN Summit」で行われるファイナルに出場できます。
コパイロツトは日本初開催となった2017年の予選大会「Tokyo Editors Lab」より、プロジェクトマネジメントや企画・運営のサポートを担当しました。

Credit

Program Manager:Sarah Toporoff(Global Editors Network) / Partner:ONA Japan / Project Manager:吉岡健太郎,  八木翔太郎(コパイロツト)

Background

世の中の情報媒体がデジタル化し、ICTツールなどが発達していくなかで、報道の在り方も変化していかなければならない。その際には報道機関が主体的に変わっていく必要がある――このミッションを掲げ、Editors Labは各国で開催されています。

アメリカ合衆国、オランダ、インド、エジプトなどからはじまり、数年前からオーストラリア、台湾など開催場所を徐々に増やしていくなかで、日本での開催が決定しました。

「日本での開催はGENとしても楽しみにしていました。なぜなら、グローバルにジャーナリズムが展開されている中で日本は独自の展開をしているように見えたからです」とGENのプログラムマネージャーであるSarah Toporoffさんは語ります。

例えば、災害時の自動報道などがそれにあたります。日本は災害時に速やかに必要な情報を報道する技術が発達しており、以前開催されたローマ大会でシェアされたことがあるそうです。

この事例のように各国が課題を共有し合う場をもつことには非常に価値があり、もっと広まってほしいという思いがGENにはありました。ハッカソンがそれを実現するひとつの取り組みでもあるなかで、独自性の高い日本ではどのようなものを開催すればいいのか。

このミッションを果たすべく、2014年に開催された朝日新聞社主催のハッカソン運営のサポートの縁もあり、コパイロツトがプロジェクトに参画することとなりました。

Planning

Editors Labの運営はGENが提供している開催ガイドラインを日本開催用にローカライズしていくところからはじまります。ただ、今回のプロジェクトのように、関係者が多く、しかも国境を越えているような場合、情報が偏在しがちで、プロジェクトの全体像がわかりづらくなってしまうことがあります。そのため意思決定がスムーズでなくなったり、プロジェクトの進みが悪くなってしまうことも少なくありません。

そこでコパイロツトの吉岡は示されたタスクをカスタマイズし、想定されるプロセスを網羅したスケジュール表と、さまざまなステークホルダーの情報を集約した一覧表を作成するところから取り組みをスタート。そうして情報を一元管理し全体像を明確にすることに加え、短時間での週二回の定例会議を設計することで、スムーズな意思決定の環境を整えました。

また2018年のテーマ検討の際には社会への提供価値という観点から時代性や時事性を重視しました。MITテクノロジーレビューのイベント運営やいままで関わってきたプロジェクトの知見から、相応しいテーマを検討・決定しました。

Good Team Building & Project Management

プロジェクトメンバーの各個人のバックグラウンドや考え方の違いなどが顕著ななか、翻訳するだけではなく、認識を細かくすり合わせていく必要性もありました。その解決策として特に重視したのがミーティングです。

slackでのコミュニケーションをベースに、重要な検討の際には積極的にミーティングを設定し、何をどう決めていくかというプロセスを明確に意識しつつ、意思決定を行いました。

関係者それぞれが多忙だった場合、曖昧な投げかけ方をしてもなかなか物事は決まりません。「具体的なプランを示すことが時間を有効活用するファシリテーションだった」と吉岡は言います。そのため登壇者の検討の際など、いくつかのプランを示しながら意思決定の負荷をできるだけ減らして進めていきました。

Result & Next Step

2018年のTokyo Editors Labは2日間開催されました。テーマは「Fact-checking and fighting misinformation(ファクトチェックと誤報との戦い)」。チームは記者、デザイナー、技術者の3名で構成され、11チームが参加。二日間でテーマに基づいた課題を解決するソリューションを開発・提案した結果、ニッポン放送の「CATALANA」のプロトタイプが優勝しました。

「CATALANA」はニュース記事内で引用された「発言部分」の音声から、テキスト検索を通じて前後の文脈まで含めた原音声を確認できるプラグインで、より正確な情報を得られるようにすることで、発言を部分的に切り取る報道のミスリードを減らすというソリューションです。

ニッポン放送チームはその後、ポルトガルのリスボンで行われたGENサミット2018に参加しました。南アフリカ、スペイン、ルーマニア、オーストラリア、インドネシア、ブラジル、韓国、日本、ポルトガル、ナイジェリア、レバノンを代表するトップチームが集結し、Editors Labのワールドチャンピオン獲得をかけて、チャレンジが繰り広げられたそうです。

優勝したのはオーストラリアのSeven West Mediaの「Sports Mate」。あらゆるスポーツにおいて「今何が起こっているか」を理解するのは熱心なファンでない限りむつかしさを伴うものですが、ユーザーはSports Mateにより画面に表示された単語やフレーズをクリックすることであらかじめ登録された説明を受け取ることができるようになります。各スポーツに存在する独自のルールや専門的な説明をどんなひとも簡単に理解できるようになるのです。

一般的にハッカソンで作成されるプロトタイプが、サービスリリースにつながるケースはあまり多くありませんが、GENには社会に実質的なインパクトをもたらす取り組みをしたいという思いもあり、2018年には、ハッカソン後にソリューションを具体的な商品開発までつなげるフォローアッププログラムも提供されました。

一度きりのプロジェクトで終わらせず、そこで得られたナレッジを何らかの形で次に活かす、という考え方で動くことで、プロジェクトはより適切な形にデザインされ進んでいきます。ハッカソンという場がさまざまなつながりを生み、参加者にさまざまな刺激を与える機会になっていくためにも、コパイロツトとしてできることを続けていきます。

Comment

Sarah Toporoffさん(Global Editors Network):

コパイロツトと仕事をしてみて、スケジュール通りにマネジメントを行い、ステークホルダーをケアしていくスペシャリスト的な動きのみならず、現場で実際に手と足を動かす役割を率先してこなす動きもできるバランスが良かったです。それが日本で再びハッカソンを開催できると確信する決め手となりました。

6年間、様々なトライアンドエラーを行ってきており、まだまだ改善できる点はあります。

例えば、まだ至る所でソリューションや課題意識は共有されていません。報道機関はサイロ化*してしまう傾向にありますので、そこに風穴を開けようとしています。課題意識やソリューションを部署、企業間、ひいては国を超えて共有し連携ができたら、広い目で見てメディアの状況は変わっていくと思います。

*ある組織が、他部門と情報共有や連携をせずに独自で業務を遂行し、孤立した状態になってしまうこと

 

古田大輔さん(ONA Japan、Buzzfeed Japan編集長)

朝日新聞時代に日本メディア初の大規模なハッカソンをコパイロツトの皆様と実施しました。今回、Online News Associationとして日本初のEditors Labを開催するにあたり、ぜひ一緒にやりたいと思いました。結果は大成功。困難だけどワクワクする初めての挑戦を、議論しながら形にしていく。冒険的であればあるほど、コパイロツトの皆さんは最高のパートナーです。

 

Irene Jay Liuさん(Google news lab)

Tokyo Editors Lab は、過去 2 年間に渡り、Copilot と ONA Japan の協力のもと、大きな成功を収めました。

Google News Initiative は引き続きジャーナリズムのクオリティ向上に貢献し、この分野におけるイノベーションを促進していくにあたり、今後も Copilot の皆さまの協力に期待しています。

 

吉岡:

国内の報道機関横断で「ハッカソン」というかたちで技術的な競争を行う機会があまりなかったため、そこに大きな意義を感じていました。

私自身は普段MITテクノロジーレビューを担当しているのでメディアという視点からですが、社会に対して情報を提供することの重みは強く感じていました。自分たちも近い問題意識を持ちながらセンシティブなテーマを提案できたのは社会的な価値を感じます。

また今回は、コパイロツトのスキルセットがグローバルに使えるものであるか、という試みでもありました。価値が出せてそれを証明できたのであれば、来年はさらに大きなことに繋げていきたいです。ありがとうございました。

 

八木:

日本では類を見ないメディアや報道機関を横断したハッカソンでしたので、最初から興味をもって関われました。海外・国内問わず、業界で活躍する様々な方の意見や考えを伺うことができました。準備はもちろんですが、最も面白いと感じたのはハッカソン当日でシェアされるアイデアです。テーマの重要性も含め、アウトプットされたプロダクトがどれも面白いと感じました。

私たちは報道機関ではないからこそ、中立的にGENのビジョンに沿ったプロジェクトの企画とマネジメントを行えた部分があると思います。それは立場としては特殊ですが、役立てる場面が他にもあるのではないのかと思います。