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Art Buyer Project – supported by TSCA

http://tsca.jp/ja/

「TSCA」(Takuro Someya Contemporary Art)は、コパイロツト代表の定金と染谷卓郎さんが共同代表を務める、プライマリーの現代美術ギャラリーです。染谷さんは、東京のギャラリー勤務を経て2005年に独立され、同じ年に定金と出会い現在まで運営を共にしています。コパイロツトでは、TSCAの立ち上げ時から現在まで、ギャラリーワークに付随するタスクや、現代アートに関する事業の開発、レクチャーやイベントの実施といった、ギャラリーがあまり行なわないようなビジネスプロジェクトをはじめ、さまざまな形で染谷さんと活動を行なってまいりました。こうしたTSCAさんとのご縁により、アートの世界を身近に感じることができ、アートを用いた広告ビジネスに関わる機会も増えています。そんな中で、私たちが力を注いでいこうと考えているのが、広告と現代アートの業界をつなぎ、両者を良好に橋渡しする「アートバイヤー」としての業務です。こちらの記事では、コパイロツトが取り組んでいる、このアートバイヤーの仕事内容についてご紹介いたします。

 

Credit

Art Buyer:船橋 友久(コパイロツト) / Adviser:染谷 卓郎(Takuro Someya Contemporary Art) / Producer:定金 基(コパイロツト)

Background

現在、広告業界において「アート作品をクリエイティブとして使用したい」というニーズが増えています。コパイロツトでも、お付き合いのある企業様からアーティストの紹介を求められたり、自分たちの企画で現代アートの作家さんを起用したいと考えた際、染谷さんにご相談したような案件もありました。

ただ、広告業界からは現代アートを求める動きはあるものの、これまで双方の接点が少なかったこともあり、現代美術ギャラリー側があまり積極的ではないケースや、認識の相違から摩擦を招く事態もあったようです。

コパイロツトは、現代アートに関する日本人のリテラシーは向上すべきであり、現代アートの優れた価値をより多くの方に向けて紹介していきたいと考えています。その際に、広告は効果的なメディアであると常々感じていました。そのため、現代アート×広告プロジェクトの案件において必ず発生する課題を、解決するための糸口はないものかと考えてきました。

Planning

そこでコパイロツトは、アートバイヤーという立場として広告業界の流れを押さえつつ、またTSCAとのお付き合いの中で培った現代アートに関する知識を活かし、お互いをファシリテートできるような存在になろうと考えました。

なお海外では、広告代理店にインハウスでアートバイヤーが存在しているケースがあるなど、アートは広告業界の近くにあり、ビジネスに組み込まれています。ただ日本においては、そのような状況がまだ整っていないため、これから開拓が行なわれていく途上にあると言えます。

また、これまでのアートバイヤーは、ギャラリーやアーティストと近い立場にあるのではなく、クライアントや代理店サイドに立ち位置が近く、そこからの依頼を受けてビジネスを行なってきました。そのため、行動原理はクライアントの意向に沿ったものでした。コパイロツトでは、こうしたアートバイヤーのあり方を踏襲したいのではなく、むしろギャラリーやアーティストの近くに立つアートバイヤーが、今の日本に必要だと考えています。

なお、アートギャラリーの本業は、あくまで作家のマネジメントや作品のセールスであるため、広告制作は二次的なビジネスにならざるを得ません。そのため、どうしても広告業界への参入を後手にしてしまいがちです。コパイロツトが手がけるアートバイヤーは、ギャラリー内部で担当することが難しい広告ビジネスを肩代わりして推進し、新たなビジネスモデルを構築することができるような立場となるべく、プランニングを行ないました。

Good Team Building & Project Management

なお、アートバイヤーのおもな役割をまとめると、下記のようなものが挙げられます。

・クライアント(企業や商品)と作家(アーティスト)の接点を明確化する
・代理店(依頼企業)とギャラリーを良好に橋渡しする
・現代美術界と広告(PR)界のフィーの差をしっかり説明する
・知的財産権などの権利の取扱を円滑にする
・露出に対する反応や所感のフィードバックを行う

これらをスムースに実現するためには、最適なチームビルディングを行なう必要があります。チームとなる方々は、リーガル、コンサルティング、ファンドレイズ、そしてギャラリストなどからなるアドバイザー等と考えています。

このようなチームビルディングは、アート業界と独自のつながりがあってこそ可能です。例えば、現代アート業界の著作権についての深い知見を持っている弁護士はごくわずかであり、彼らとコミュニケーションできる人材でなければ、現代アートにおけるビジネスは手がけにくいと言えます。またアートバイヤーは、複数のギャラリーとつながりを持つことで、アーティストに関する知識を蓄え、企業に対して多彩な提案ができる能力も求められます。

Result & Next Step

アートバイヤープロジェクトは現在進行形のものであり、次のステップとしては、現代アートに関する新しいビジネスモデルのひとつとして、コパイロツト流のアートバイヤー像を確立させることを目標としています。現代アートの社会的な価値を普及させていくために、広告媒体を良い形で活用できる仕事を創りだしていくこと。それが「正義の味方ビジネスモデル」を掲げるコパイロツトらしさが発揮された関わり方ではないかと感じています。

なお、あまりにアートをビジネスにしたいと主張しすぎると、アート業界から違和感を覚えられてしまう可能性があります。そのため、ビジネスというよりも、アートの価値をマネタイズする新しい仕組み、と表現していくほうがよいかもしれません。ビジネスモデルとして確たるものになるかどうかは未知数ですが、少なくともマネタイズの可能性はあるとコパイロツトでは考えています。 また現在では、圧倒的にクライアントサイドからのニーズの方が多数ですが、クライアントや代理店のみならずギャラリーサイドからも、広告制作に関する問い合わせが、アートバイヤーに入るような状況を作ることができればよいとも考えています。 さらには、日本人アーティストとの仕事を希望する、海外のナショナルクライアントからの問い合わせも、アートバイヤーとして受けられるような状況を作ることができれば理想的です。世界的に日本のアートが広がっていくことが、翻って日本人のアートリテラシーが向上するきっかけにもなる。こうした思いが、私たちが目指す次のステップとなっています。

Comment

「コパイロツトの業務から得られる、依頼主と制作サイドをファシリテートするというノウハウや、日々のクライアントワークでのプロジェクトマネジメント業務などは、アートバイヤーとしての仕事にも活かすことができます。コパイロツトでは、染谷さんに選んでいただいた美術書を使って定期的に勉強会を開いていたり、そうした知識もプラスで活かしながら、今後も広告とアートをつなげられるように頑張りたいです」(船橋)

「アートに関わるような仕事をしていると、文化的な印象により金銭面での交渉事を行ないにくくなるケースがあります。そんな時、アートのことを理解したうえで、このケースではどれくらいの対価が必要か等、広告的な目線から明快に説明をしてもらえるアートバイヤーのような方がいると、広告業界のビジネスに、ギャラリーがより参加しやすくなると感じています」(染谷)

「染谷さんと出会う以前は、アート作品をデザインの文脈からでしか見られていませんでした。でも、お仕事をご一緒してから、現代アートの面白さに気がついたんです。僕は個人的に、アート作品に触れることは『思考を促進する』ものだと思っています。作品と自分の間に、思考を通したインタラクションが生まれること。それは広告の仕事をしていく上でも、すごく役立つものだと感じています」(定金)

(写真左から、コパイロツト船橋、TSCA染谷卓郎さん、コパイロツト定金)